お灸事典


火縄銃の種火に「もぐさ」
時は戦国時代。
日本に伝わった火縄銃は、戦国時代のいくさのあり方にも大きな変化をもたらしました。
そんな火縄銃とともに使われた火に、お灸の原料「もぐさ」がかかわっていたといわれています。

日本に伝わった火縄銃
1543年、種子島に漂着したポルトガル人によって、日本に鉄砲が伝えられたといわれています。
種子島の領主・種子島時尭(たねがしまときたか)は、その威力に注目し、鉄砲を購入。さらに刀鍛冶たちに鉄砲の製造を命じたと伝えられています。
やがて鉄砲の製造技術は各地へと伝わり、戦国大名や武将たちの間にも広まっていきました。
それまで、いくさで使われていた代表的な武器といえば弓や槍などでした。そこへ登場したのが、火薬の力で弾丸を飛ばす火縄銃です。離れたところから相手を狙うことのできる火縄銃は、戦国時代のいくさにも大きな変化をもたらしていきました。
火縄銃に欠かせない「火」
「火縄銃」という名前の通り、火縄銃を使うために欠かせなかったのが「火」です。
火縄銃は、銃口から火薬と弾丸を込め、火のついた火縄を使って火薬に点火し、その爆発する力によって弾丸を飛ばします。
つまり、どれほど火縄銃や火薬を用意していても、火がなければ撃つことはできません。
現代なら、マッチやライターを使えば簡単に火をつけることができますが、もちろん戦国時代にはありません。必要なときにすぐ火を使えるようにすることは、とても重要なことでした。


もぐさ壺
火花を受け止めた「もぐさ」
当時、火を起こす方法のひとつに、火打石と火打金を打ち合わせる方法がありました。
火打石を火打金に打ちつけ、飛び出した火花を燃えやすいものに受け止めて、種火をつくります。その火花を受け止めるために使われたもののひとつが、「もぐさ」でした。
「もぐさ」に移された火種は、「もぐさ壺」と呼ばれる容器に入れられ、必要なときに火を使えるよう携行されたといわれています。
お灸だけではなかった「もぐさ」
お灸の原料としておなじみの「もぐさ」。よもぎの葉を乾燥させ、細かく砕き、葉の裏側にある綿毛を集めてつくられます。火がつきやすく、火持ちがよいことから、火種を受ける材料としても利用されていました。
「よもぎ」の名前の由来には、「善燃草(よく燃える草)」からきたとする説があります。よもぎは、昔から「火」と深いかかわりをもつ植物でもあったのです。

まとめ
お灸の「もぐさ」の歴史をひもといてみると、人々の健康を支えるだけでなく、火を起こし、火をつなぐためにも使われていたことがわかります。身近なよもぎをさまざまな形で暮らしに生かしてきた、昔の人々の知恵を感じることができます。




