お灸事典

もぐさ
お灸をはじめ、お灸以外にもいろいろな「もぐさ」の働き
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「moxa」は、世界共通語
英語でもフランス語でも「もぐさ」は「moxa」
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英語で、「もぐさ」は「moxa」。
お灸に使う「もぐさ」が、そのままフランス語でもドイツ語でも「moxa」なのです。

大航海時代の幕開け

15世紀半ばからはじまった大航海時代。
イギリス、オランダ、ポルトガルなどヨーロッパ諸国のアジア進出が盛んになり、日本をはじめアジア諸国から香辛料、お茶、絹織物などの特産物と並んで生活習慣や文化がヨーロッパに伝えられました。
その主役となったのが、17世紀に入り、東アジアに設立したオランダ東インド会社、目的はアジア地域との貿易でした。

ヨーロッパとお灸の出会い

「moxa」という言葉をはじめてヨーロッパに伝えたのは、バタヴィア (ジャカルタ)にあったオランダ東インド会社の牧師、ヘルマン・ブショフでした。
当時中国は海禁政策をとっており、海外との接触をたっていたため、お灸は日本経由でヨーロッパに伝えられたのです。

彼は長年痛風に悩まされ、それまでヨーロッパ人医師の治療を受けていましたが、効果がなく、ある日、痛みにたえかねベトナム人女医のお灸治療を受けたのでした。

そして膝などにお灸をしてもらったところ、痛みは消え、その夜ブショフはぐっすり寝ることができたといいます。
この時の体験を、彼は痛風に悩むヨーロッパの人々に伝えるために、自分の体験について、そして痛風の痛みを和らげてくれた「お灸」とその治療に使われていた「もぐさ」について、会社の医師の助言のもと書物にしたのです。

「moxa」という言葉はこうして生まれた

著書の中でブショフは「お灸に使われた「もぐさ」は、たいていは病気にきく、ウール状でやわらかく、この世で最も尊いある草から作られるが、その草は秘密にされている」と記していることでもわかるように、ブショフにとってお灸治療より肌に置かれて燃える「もぐさ」の印象がとても強かったようで、和名「もぐさ」という言葉をそのままアルファベットで表記したため、「moxa」という言葉が誕生したのです。

「moxa」の人気

そして彼の著書は、痛風に悩む人が多かったヨーロッパで大変な評判となり、オランダ語についで、英語、ドイツ語にも翻訳され、広まるにつれお灸に使う「もぐさ」は世界で「moxa」と呼ばれるようになったのです。
ヨーロッパで「もぐさ」はとても高価で取引されるようになり、19世紀まで「moxa」は痛風の治療の主役として「moxa」が使われていました。こうして「moxa」は世界の辞書に表記される共通語となったのです。

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「お灸」
おきゅう
お灸の原料「もぐさ」は「よもぎ」から
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お灸の原料「もぐさ」は「よもぎ」から作られます。

「よもぎ」は、日が沈むと全体が銀白色に見えます。夜の間は、葉を閉じるため葉の裏が見えているのです。

「よもぎ」の原産地は、中央アジアの乾燥地帯とされ、昼間 炎熱の砂漠は夜になると、放射冷却によってぐんと冷え込むので、葉の温度が下がるのを防ぐため、夜になると葉を閉じる習性を身につけたのです。

植物の葉の裏には、気孔と呼ばれる呼吸するための穴が無数にあり、呼吸とともに気孔からは葉の水分も放出します。
砂漠を生きるために「よもぎ」は、この葉の裏をびっしりとロウ成分を含んだ白い綿毛でおおっています。
この綿毛、顕微鏡で見ると毛が途中でT字型の形状に分かれ、綿毛はより密にして気孔からの水分の蒸発を防いでいます。

この周到な仕組みを身につけたことで「よもぎ」は、どんな荒野でも生きることが可能となり世界中にひろがってきたのです。



灸は北方より来たる

中国最古の医書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「灸は北方より来る」との一節があります。

きびしい寒さの中国北方の荒野でも芽を出し生きる「よもぎ」は、北方の騎馬放牧民にとって古くからとても身近な存在でした。

その「よもぎ」の強い香りは、邪気をはらうとされ、また「よもぎ」を治療にも使うなかで発達したのがお灸のはじまりとされているのです。

「もぐさ」に含まれるロウ成分

お灸に使われる「もぐさ」は乾燥させた「よもぎ」からつくられます。

砂漠に生きるために「よもぎ」が、身につけたロウ成分を含んだ「よもぎ」の葉は、火をつけてもパット燃えあがることはありません。

その理由は、ローソクと同じように、火をつけると炎の大きさがずっと一定の大きさで燃え続けるロウ成分にあります。「もぐさ」はローソクと同じように、一定の温度を保ちながらゆっくり燃えることからお灸に最適なのです。

「よもぎ」の名前の由来に「善燃草」よくもえるくさがあります。

これはお灸に使う「もぐさ」の原料として、その燃え具合がいいことから名づけられたともいわれています。

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