お灸事典

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俳人・画家
与謝蕪村
よさぶそん
蕪村の俳句にみるお灸
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蕪村の俳句にみるお灸

与謝蕪村とは

与謝蕪村(よさぶそん/1716―1784)は、大坂に生まれた江戸時代中期の俳人であり画家です。若くして江戸に出て俳諧を学び、各地を旅しながら表現を磨きました。のちに京都に居を定め、まるで目の前に景色が広がるような俳句を詠みました。 “菜の花や 月は東に 日は西に”はその代表句。俳諧では松尾芭蕉、小林一茶と並ぶ「江戸三大俳人」のひとり。

また画家としても高く評価され、池大雅(いけのたいが)と合作した国宝『十便十宜図(じゅうべんじゅうぎず)』を残しました。

『奥の細道図巻』

さらに、芭蕉を深く敬愛した蕪村は、『奥の細道』を一字一句書き写し、情景を思い描きながら絵を添えた『奥の細道図巻』を制作しています。

自然の景色を描いた山水図や俳画を数多く残し、ことばと絵で季節の美しさを表現しました。その作品は今も多くの人に親しまれています。

また蕪村は、お灸を題材にした俳句も残し、江戸の暮らしや養生文化を伝えています。

“灸のない背中流すや夏はらへ”

六月末に行われる神事「夏越の祓(なごしのはらえ)」の情景を詠んだ一句です。半年分のけがれを祓い、無病息災を願うこの日、湯浴みをして背中を流すと背中にお灸の痕がないことに気づきます。

江戸時代、お灸の痕は日常の風景のひとつでした。だからこそ“灸の跡がない背中”という表現が印象的。それは単に痕がないというだけでなく、健康上の不安やこれまでの苦労の跡もなく、心身がすっきりと整っていることの象徴とも読めます。

清めの行事と養生の習慣が重なり合い、夏の清めのひとときを印象づける一句。暮らしの中に根づいたお灸文化をさりげなく伝え、季節の節目に自らの身体を見つめていた当時の暮らしがよくわかります。

“やいとすえて 啼く子や 秋の風”

「やいと」は関西でお灸のこと。子どもにやいとをすえると、思わず声があがります。その声に、ひんやりとした秋の風が重なり、情景が目に浮かぶような絵画的な一句です。

当時、お灸はかんの虫を鎮めたり体調を整えたりするための、家庭で行う身近な養生法でした。

日々親しまれていたお灸と人々のあたたかな暮らし。江戸時代の養生文化を今に伝える、蕪村らしい一句です。

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