お灸事典

お灸の記録

日本鹿子
にほんかのこ
江戸時代の名産ガイドブック
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『日本鹿子(にほんかのこ)』とは 

『日本鹿子(にほんかのこ)』は、元禄4年(1691年)に刊行された、江戸時代の名産案内書です。古代日本の地域区分である五畿七道(ごきしちどう)に沿って、各地の神社仏閣や名所、名物などが詳しく紹介されており、当時の人々の暮らしや地域文化を知ることができる貴重な資料として知られています。

『日本鹿子』(お茶の水女子大学図書館所蔵)

著者は、江戸時代前期に活躍した浮世草子作家(町人の暮らしや風俗を描く小説家)・礒貝舟也(いそがい しゅうや)。挿絵は、浮世絵師としてだけでなく、世界図や江戸図なども手がけた石川流宣(いしかわ とものぶ)が担当しました。親しみやすい絵と読みやすい文章によって、各地の風景や名産の魅力がいきいきと紹介されています。

『日本海山潮陸図』(東京海洋大学附属図書館所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100317533

元禄4年の初版刊行後も広く読まれ、正徳6年(1716年)には内容を増補した『改正増補日本鹿子』も出版されました。近江国(現在の滋賀県)の名産として「伊吹艾(いぶきもぐさ)」も掲載されており、当時から全国に知られる特産品であったことがうかがえます。

近江国の代表的な名産品「伊吹艾」

『日本鹿子(にほんかのこ)』には、近江国の名産として「伊吹艾」が紹介されています。伊吹山周辺は古くから薬草の山として知られ、良質なよもぎが育つ土地でした。そこで作られるもぐさは、香りや品質の良さで高く評価され、人々に親しまれていました。

『日本鹿子』(お茶の水女子大学図書館所蔵)

伊吹艾

江戸時代、お灸は日々の養生として広く用いられており、良質なもぐさは各地で求められていました。『日本鹿子』に掲載されていることからも、「伊吹艾」が近江国を代表する特産品として全国に知られていたことがわかります。江戸時代の人々にとって「伊吹艾」は、近江国を象徴する名産のひとつだったのでしょう。

『日本鹿子』に描かれた近江国

近江国は近江国十三群として紹介され、志賀・蒲生・甲賀などの地域に分けて記されています。現在、せんねん灸本社のある長浜市周辺は浅井(あさい)や伊香郡(いかぐん)として紹介されています。

また、彦根城や竹生島、白鬚大明神、三井寺、石山寺、西教寺、長命寺、浮御堂、永源寺など、近江を代表する名所や寺社も掲載されています。

名物には、「伊吹艾」をはじめ、鮒(フナ)や鯉(こい)、モロコ、ウグイ、いさざなど琵琶湖の幸、蚊屋(かや)、細表衣地(ほそおもてきぬじ)、朽木塗物(くつきぬりもの)などが紹介されており、当時の近江の豊かな文化や産業の様子がうかがえます。

江戸時代から「伊吹艾」は、近江国を代表する名産品のひとつでした。人々に広く用いられた「伊吹艾」からは、近江の豊かな自然と、暮らしの中に根づいていたお灸の文化を感じることができます。

『日本鹿子』(お茶の水女子大学図書館所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100238987

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