お灸事典


お灸の原料「もぐさ」は、身近な植物「よもぎ」から生まれます。
自然の恵みである「よもぎ」は、丁寧な手仕事を重ねることで、ふんわりとした「もぐさ」へと姿を変えていきます。
その仕上がりを大きく左右するのが、「石臼(いしうす)」による仕上げです。
よもぎからお灸の原料もぐさができるまで

1.よもぎ摘み取り
初夏、5月から7月にかけて「よもぎ」を摘み取ります。
2.天日干し
摘み取った「よもぎ」は、日光にしっかりとさらして乾燥させます。
3.火力乾燥
冬になると、陰干ししておいた「よもぎ」をさらに火力で乾燥させます。
4.粉砕
十分に乾燥した「よもぎ」を粉砕機にかけて細かく砕き、繊維をほぐして次の工程へと進みやすくします。
5.石臼びき
砕かれた「よもぎ」を石臼に仕込み、ゆっくりと挽くことで繊維を傷めず空気を含んだやわらかな質感へと仕上げ、用途に応じて挽く回数を変えるこの工程こそが、ふんわりとした「もぐさ」の質を決める大切な仕上げです。
6.長通し(ふるい)
最後に不純物を取り除きます。
円筒形の篩(ふるい)機にかけることで、葉肉や葉脈などの緑色の部分が取り除かれ、やわらかな綿毛だけが残ります。
さらに唐箕(とうみ)にかけて細かな不純物を取り除き、純度の高いもぐさへと仕上げます。
石臼づくりの里 ~ 曲谷集落
伊吹山のふもとにある曲谷集落は、かつて「石臼づくりの里」として知られていた山あいの集落です。
この地では、良質な石を使い、ひとつひとつ手作業で石臼がつくられてきました。
堅くきめ細やかな石は摩耗しにくく、均一に挽けるのが特長です。

手仕事で生まれる挽きの違い
石臼づくりは単なる加工ではありません。
石を切り出し、形を整え、溝を刻む、そのすべてが熟練の技によるものです。
溝の刻み方ひとつで挽き上がりが変わり、「もぐさ」の仕上がりにも影響します。
繊維を傷めず、ふんわりとした質感に仕上げるために、石臼の精度は欠かせない要素です。
石臼は現在、もぐさづくりだけでなく、伊吹そばのそば粉やコーヒー豆を挽く道具としても使われており、ゆっくりと素材を挽くことで風味を引き出す道具として親しまれています。
こうした伊吹山の豊かな自然と手仕事の文化の中で育まれてきたのが、「伊吹もぐさ」です。
伊吹もぐさ
滋賀県の伊吹山のふもとで育つよもぎからつくられる「伊吹もぐさ」は、古くから上質なもぐさとして知られています。豊かな自然の中で育まれたよもぎを丁寧に乾燥・精選し、やわらかな綿毛だけを取り出して仕上げます。ふんわりと軽く、なめらかな質感が特長で、お灸のやさしい温もりを支えています。




