お灸事典

もぐさ
お灸をはじめ、お灸以外にもいろいろな「もぐさ」の働き
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本朝食鑑
ほんちょうしょっかん
もぐさからひもとく、江戸時代の食と養生。
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『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』とは

『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』は、江戸時代に成立した、日本の食を幅広くまとめた、日本初の本格的な書物とされる一冊です。医師の人見必大(ひとみ ひつだい)によって著され、原本は全十二巻から成ります。

穀類・野菜・魚介・獣肉・酒・調味料など、庶民が日常よく用いる食品を中心に、数百種に及ぶ食材を収録し、栽培や採取、加工・調理法、味、食する時期や部位、種類や産地に至るまで、食品の見分け方や扱い方が詳しく記されています。

また本書は、食養生の観点から、食品の効能や害となりやすい点、体質との関わり、食禁などにも踏み込み、食と健康との深い関係を論じている点が大きな特徴です。

『本朝食鑑』は、江戸期の食文化と医療観を今に伝える貴重な資料であり、その中には、お灸の原料「もぐさ・よもぎ」が登場します。

『本朝食鑑』(味の素食の文化センター所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100249595

火類五種の中のひとつ「艾火」

金石火や薪火、炭火などと並び、艾火は火類五種のひとつとして位置づけられています。本書では、もぐさに火をつけて行う灸が、さまざまな病を治す方法として用いられてきたことが述べられています。

灸のしかた

灸に用いるもぐさは、葉をよく揉んで茎などを除き、綿のように柔らかくして乾燥させ、用途に応じて形や大きさを整えます。両端を尖らせてひねったものは撚灸(ひねりやいと)といい、紙に包んだ棒状のもぐさを作り、切り分けて用いるものを切灸(きりやいと)と呼びます。
さらに、雄黄(ゆおう)や黄丹(おうたん)などの薬物をもぐさにひねり合わせ、急所に用いるものは薬灸(くすりやいと)とされ、一壮で多数の灸に相当する強い作用があると考えられていました。

ただし薬灸は灸痕が強く残りやすいため、常用すべきものではなく、命に関わる急所や重い病に限って用いるべきだと戒められています。

また、しょうが・にんにく・味噌などを患部に用いる方法や、浦の穂に似た灸を用い、衣服の上から熱を伝える灸法、腫れ物の初期に用いる特殊な灸法など、症状に応じた多様な灸法も紹介されています。もぐさは五月五日に採取し、陰干ししたものが良いとされ、産地としては近江・伊吹山のもぐさが最上とされ、古くから灸治に用いられてきました。

『本朝食鑑』(味の素食の文化センター所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100249595

『本朝食鑑』(味の素食の文化センター所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100249595

日本食の基盤「味噌」

味噌は、わが国では古くから身分の上下を問わず、朝夕の食事に用いられ、穀物を中心とした食生活を支えてきた欠かすことのできない食品です。誰が最初に作り出したのかは分からないものの、一日として無くてはならないものと考えられてきました。

大豆のもつ甘味と温性は、気をおだやかにし、腹の内を和らげ、血のめぐりを良くし、さまざまな薬の毒を解く働きがあるとされていました。
また、痛みや腫れ、打撲や骨折などのけがの際には、まず患部に味噌を塗り、その上から艾灸をすえると、腫れを鎮め、よく温め、痛みを和らげると記されています。

『本朝食鑑』は、食を通して身体をととのえるという、江戸時代の養生観を伝える書です。味噌などの身近な食品とともに、もぐさを用いた灸が記され、食と医が暮らしの中で結びついていたことがうかがえます。
よもぎから生まれるもぐさと、その艾火は、身体を温め、めぐりを助ける知恵として受け継がれてきたのです。

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