お灸事典

お灸の記録

『強情灸』
ごうじょうきゅう
落語にも登場する「お灸」
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『寿限無(じゅげむ)』『時そば』『まんじゅうこわい』など、落語には人々の暮らしを題材にした演目が数多くあります。そんななか、「お灸」が主役として登場するのが、『強情灸(ごうじょうきゅう)』という一席です。

あらすじ

“十人十色、人それぞれ顔かたちが違うように、気性もまたさまざま。気の短い人、のんびり屋、そして強情っぱり。まったく世の中は面白いもんでして”
と、世間の人情模様を紹介するくだりからはじまります。

物語の主人公は、江戸っ子の大工。意地っ張りで短気、そして強情者です。
ある日、友人が “お灸ってのは熱いもんだ” と話すと、
“そんなもん、熱くもなんともねぇ” と笑い、左腕にもぐさを山盛りにして自ら火をつけてしまいます。 “ほら見ろ、ぜんぜん熱くねぇ” と言いはり、すると、友人がひと言。

“そりゃそうだ、まだ火がまわってねぇんだよ”
すると、うちわを取り出して、せっせと自分であおぎはじめる始末。
そのうち
“石川五右衛門は釜茹でだ、お七は火あぶりだぞ”
と、強情に拍車がかかりますが、お灸の熱さはどんどん増すばかり。ついには耐え切れず、お灸をはらいのけてしまいます。

そして最後のひと言
“うぅっ、冷てぇ!…おれは熱くねぇが、五右衛門はさぞ熱かったろう…”
というところで幕が下がります。
江戸っ子に意地っ張りな性格や、見栄を張るやりとりが笑いを誘う、「お灸」を題材にした落語の名作です。

落語の「お灸」が、今の暮らしにも

この落語は、身体の具合が悪くて、近ごろ評判の「お灸」をすえに行っていたという、江戸っ子二人の話からはじまります。

江戸時代の人たちにとって、「お灸」はとても身近なもので、暮らしの中でよく使われていました。

「お灸あるある」の話だからこそ伝わるおもしろさ、それが、『強情灸』の人気のひとつでもあったのです。

健康のために、欠かすことなく、すえられてきた先人の知恵「お灸」。

今では、熱さをがまんすることなく、心地よく温かいお灸として受け継がれています。

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