
━古代から暮らしに役立ってきた秋の七草
まだまだ厳しい暑さが続く8月。セミの声が響き、夏真っ盛りのように感じますが、暦の上ではすでに秋を迎えています。
古くから人々は、身近にある植物をさまざまな形で暮らしに取り入れてきました。薬用や食用をはじめ、建築や工芸などに利用される植物は「有用植物」と呼ばれ、秋の七草にも、古くから人々の暮らしに役立てられてきたものがあります。
━万葉集にも詠まれた七つの草花
秋の七草は、ハギ(萩)、オバナ(尾花・ススキ)、クズ(葛)、ナデシコ(撫子)、オミナエシ(女郎花)、フジバカマ(藤袴)、キキョウ(桔梗)の七種類です。
その由来とされているのが、日本最古の歌集『万葉集』に収められた山上憶良(やまのうえのおくら)の二首の歌です。
“秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり)
かき数ふれば 七種(ななくさ)の花”
“萩の花 尾花 葛花 なでしこの花
をみなへし また藤袴 朝貌(あさがほ)の花”
秋の野に咲く花を指折り数え、続く歌で七つの草花を挙げています。この歌が、現在の「秋の七草」の由来とされています。
━秋の七草は身近な「有用植物」
秋の七草は、眺めて楽しむだけの植物ではありません。
たとえばクズ(葛)は、根から採れるでんぷんが「葛粉」として食用にされ、根を乾燥させたものは「葛根(かっこん)」と呼ばれ、古くから生薬として用いられてきました。また、茎から採れる繊維は「葛布(くずふ)」などを作る材料にもなります。

ススキは、茅葺き屋根の材料や家畜の飼料などに使われてきました。ハギの枝は、垣根やほうきなど、身近な道具にも利用されていたといいます。
野に生えている植物を無駄にせず、その特徴を知り、暮らしに生かす。そこには昔の人々の知恵が詰まっています。
フジバカマは、乾燥させると桜餅の葉を思わせるような香りを放ち、かつては香りを楽しむためにも用いられました。
キキョウの根は「桔梗根(ききょうこん)」、オミナエシの根は「敗醤(はいしょう)」と呼ばれる生薬として知られています。ナデシコも、古くから薬用として利用されてきた植物のひとつです。
美しい花として愛でるだけでなく、それぞれの性質を見極めながら暮らしに役立ててきたことがわかります。
━実は夏から咲いています

「秋の七草なのに、8月は少し早いのでは?」と思うかもしれません。
ところが、秋の七草には夏から花を咲かせるものもあります。キキョウやナデシコ、オミナエシなどは夏から秋にかけて花を咲かせ、暑さの中でひと足早く秋の気配を届けてくれます。
また、ススキが穂を出し、風に揺れる姿が目立ちはじめると、季節が少しずつ進んでいることを感じます。
暦の上では立秋を過ぎ、8月23日頃には二十四節気の「処暑」へ。処暑には「暑さがおさまる頃」という意味があり、朝夕の風にも少しずつ変化が感じられるようになります。
━身近なところで小さな秋探し
秋の七草は、華やかな花ばかりではありません。野原や道端など、身近な自然の中でひっそりと咲く、その素朴な姿も魅力のひとつです。
1000年以上も前から愛でられ、食や住まい、薬用など、人々の暮らしにも役立ってきた秋の七草。
まだ暑さの残る季節ですが、朝夕の涼風や、聞こえてくる虫の声が変わったりと、季節はゆっくり秋へ向かっています。
いつもの散歩道でも、少し足を止めて草花に目を向けてみると、触れ合う楽しさを感じることでしょう




