
━アキアカネ
アキアカネは、赤とんぼの代表として日本に広く分布しています。
秋、稲刈りの終わった田んぼなどで産卵し、卵のままで越冬。春、田んぼに水が入るころに孵化すると、ヤゴとして水中で過ごします。
そして梅雨の頃に羽化。飛べるようになると、暑い夏を避けるように山へ避暑し、夏中は涼しい高原などで成長します。カラダもすっかりアカネ色になる頃、秋の気配とともに里におりてきます。
赤とんぼの名は、その細長い胴から、赤い棒(あかいぼう)が転じて赤とんぼになったとか。
━とんぼの歴史は三億年
とんぼの仲間は、恐竜が登場するよりもはるか昔、約3億年前の石炭紀にはすでに地球上に現れていました。なかには、羽根をひろげると70㎝もある大きな「メガネウラ」という、とんぼの仲間もいました。
この時代、空気中の酸素濃度は現在よりも高かったと考えられています。
昆虫はカラダにある「気門(きもん)」から空気を取り込み、気管を通して酸素を全身へ運ぶため、高い酸素濃度が巨大化を可能にした理由のひとつと考えられています。
━アキアカネの「茜」
アカネはアカネ科の植物で、その根から採れる染料は、少し黄味がかった深い赤色に染まります。
日本では古くから赤色の染料として使われ、平安時代までは「赤」といえば「茜」といわれるほど、代表的な赤色でした。
アキアカネの「アカネ」も、秋になると茜色に染まるカラダの色に由来しています。
━アキアカネが何かに止まるとき
“夕やけ小やけの赤とんぼ 止まっているよ 竿のさき”と童謡にもあるように、とんぼは見晴らしがよく、すぐに飛びたてるように木の枝や竿など、とがったものの先によく止まります。
━夏は暑さを避け高原で過ごしたアキアカネ
暑い日、アキアカネが何かに止まるとき、ピンとお尻を上げ、逆立ちの姿勢に良くなります。
「オベリスク姿勢」と呼ばれるこの姿勢は、とんぼが変温動物で、自分で体温を一定に保つことができないため、太陽の光がカラダにあたる面積を少なくして、体温が上がりすぎるのを防いでいるのです。
反対に秋が深まり気温が低くなると、アキアカネが日なたの石などに止まる姿も見られます。太陽の光で温められた場所を利用して、カラダを温めているのです。
「オベリスク」とは、古代エジプトの神殿などに立てられた、先端のとがった細長い石柱のこと。とんぼがお尻を高く上げた姿が、このオベリスクに似ていることから「オベリスク姿勢」と呼ばれています。
━とんぼの国 日本
古代、日本は「秋津洲(あきつしま)」とも呼ばれていました。
「秋津」とは、とんぼの古語。とんぼが育つ水辺のある土地は、豊かな穀物を生み出す土地でもありました。そのためとんぼは、古代の人々にとって五穀豊穣の象徴だったのです。
━とんぼは「勝ち虫」
戦国時代、とんぼはまっすぐ飛んで後戻りしないところから「勝ち虫」と呼ばれ、勝利のシンボルとして前田利家など武将の兜にも好んでつけられたのでした。
━あんなにいたアキアカネ

草むらなどで空中に向かって指を立てて待っていると、指先に止まってくれたアキアカネ。
今、そのアキアカネが新しい農薬の登場や水田の環境変化などから、いくつかの県でレッドデータブックの絶滅危惧種に挙げられています。
神話の時代からとんぼの国「秋津洲(あきつしま)」と呼ばれるほど、とんぼと深くかかわってきた日本。私たち日本人にとって、とんぼの減少は、ただとんぼのことと済ませられることではないのです。




