
吐く息も白く、寒さが身にしみるころ。
心せわしい師走を迎えました。
山々には雪の気配が漂い、ゆっくりと冬の装いを整えていきます。
この時季、12月13日からは、日本では昔から暮らしを整える「正月の事始め」が始まります。
家々では迎春の支度が進み、松の香りがただようころ、新しい年を迎える準備が整ってきたことが感じられます。
━ 正月の事始め
「正月の事始め」とは、12月13日に行われる、正月を迎えるための準備を始める日のこと。
江戸時代には、この日に家中のすす払いを行い、歳神さまを迎えるための準備を整え始めました。
以後、門松やしめ縄などの正月飾りの支度にも取りかかる、日本の年中行事の大切な一区切りとされています。
━ すす払い
すす払いは、江戸時代に江戸城で年中行事として実施されていたのが起源とされ、その作法が城下へと伝わり、やがて一般家庭にも広まったといわれます。
一年の汚れを払い落とし、氏神さまを迎えるための清浄な場を整える重要な年中行事であり、家の隅々まで掃除が行き届いた家には、氏神さまが多くの福を授けるとも信じられてきました。のちの年末大掃除の起源となった行事です。
すす払いに使った笹竹の先端の葉や藁のほうきは、行事を終えたのち、しめ縄の材料にしたり、小正月の火祭りである左義長のお焚き上げに供するなど、年中行事の中で大切に扱われてきました。

━ 松迎え
正月飾りに用いる門松やしめ縄のための松を山に取りに行く行事。
門松は、歳神さまが迷わず家を見つけて降り立つための目印(依り代)とされ、しめ縄は神域と俗界の境を示す結界です。
こうした飾りを整えるための松迎えは、正月準備の中でも大切な行事とされています。
━ 歳の市
年末に立つ市で、正月を迎えるための品々を売り買いする市場のこと。江戸時代には浅草・日本橋などの市が特に賑わい、松飾りやしめ縄、羽子板、玩具、歳末用品などが並びました。年越しの支度を整えるため、多くの人々が行き交い、町の年の瀬を象徴する風物詩とされました。
現代でも浅草寺の「羽子板市」などがその名残として続いており、正月を迎えるための喜びと活気を伝える行事です。

━ 京都の五花街の事始め
祇園甲部・祇園東・先斗町・宮川町・上七軒の京都の五花街では、12月13日を「事始め」とし、芸妓や舞妓が鏡餅を手に一年の感謝を伝えるため、師匠やお茶屋、置屋へ挨拶回りを行います。
古くから受け継がれてきたこの風習は、冬の京都を彩る五花街の大切な年中行事です。
日本には、季節とともに暮らしてきた先人の智恵が数多く受け継がれています。これからのブログでは、季節の知恵やならわしをお届けしていきます。
季節を楽しみながら、無理なく“季節の養生”も日々の暮らしに取り入れてみてください。せんねん灸では、各二十四節気に合わせたおすすめのお灸ポイントも紹介していますので、ぜひ季節の養生にお役立てください。



