お灸事典

もぐさ
お灸をはじめ、お灸以外にもいろいろな「もぐさ」の働き
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印泥
いんでい
美をつくり出す「もぐさ」
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お灸に使われる「もぐさ」は「印泥(いんでい)」にも使われています。
「印泥」とは、印鑑を押す時に使う朱肉のルーツ。今、朱肉といえばスポンジなどに朱色の顔料をしみ込ませたものが一般的ですが、印泥は書とか絵画などに落款(らっかん)として押すときなどに使います。

「もぐさ」が「印泥」に使われるわけ

「印泥」は、中国で古くから賢者の石と呼ばれる美しい朱色の鉱物「辰砂(しんしゃ))の微粒子と、「もぐさ」を粘りのある油で練り合わせたもので、今でもほとんど中国で作られています。

お灸に使う「もぐさ」をさらに精製を重ねた「極上もぐさ」を使うことで、朱色がほどよい量だけ印につくため、印を押したときの印影がディテールまで鮮やかになります。そしていつまでもその朱の色が変わらないのが「印泥」なのです。普通の朱肉と違って油で練り上げられているため、粘りがありペースト状なので「印泥」の名で呼ばれてきたのです。

「印」の歴史

「印」の歴史は古く、古代メソポタミア(約6000年前)では商人が商品を入れる粘土の容器に「中身」「容量」「行き先」などの目印として記号や絵を押したのがはじまり。

容器の粘土が乾く前に石や金属に彫った目印の印を押しつけていたのです。この目印の印は後に文字の発明につながったのではないかと考えられています。

「印泥」の歴史

中国では古くから書の道具である筆、すみ、硯、紙を「文宝四宝」と呼びこだわりがありました。そのため書や絵に押す印にもこだわりがあり、古代中国で生まれた篆書体(てんしょたい)と呼ばれる文字を美しくレイアウトし、石や木などに彫り「印泥」を使って押す篆刻にも篆書体の繊細な文字をきれいに再現するためにも、「もぐさ」は欠かせなかったのです。

篆書体という文字

この篆書体と呼ばれる文字は、北九州で発掘された漢の皇帝から送られた純金の金印に彫られている「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」の書体がそれで、日本で最古の印といわれ古くは政府などの官印としても使われてきました。

今も日本では、パスポートの表紙の日本国旅券の文字は篆書体です。

「印泥」を使って押された篆書体の、鮮やかな朱色の文字の美しさは書や絵を引き立てる役割も果たしてきたのです。

「篆刻」とは

本来、篆書体の文字を石などに彫ることを篆刻と呼びますが、今ではその工程だけでなく、

印影(いんえい)を鑑賞することも篆刻と呼びます。「日展」の第五科「書」の中に「篆刻」部門もあり、墨の書の並んだ一角に朱色もあざやかな「篆刻」の作品が並びます。

燃えずに働く「もぐさ」

お灸の「もぐさ」の原料「よもぎ」の語源は、「善燃草」よく燃える草が語源といわれてきました。

お灸のためにじっくり燃える「もぐさ」は、燃えることなく書の世界でも役立っているのです。

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