せんねん灸銀座10周年記念イベント
カラダとココロが元気になる講演会
東大病院のリハビリ部 鍼灸スペシャリストが教える
最強のボディメンテナンス

せんねん灸銀座10周年記念イベント
カラダとココロが元気になる講演会
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 鍼灸部門 主任。
1987年東京大学医学部付属病院 内科物理療法学教室(物療内科)勤務。アレルギー・リウマチ内科を経て、現在リハビリテーション部。宝塚医療大学客員教授。東京有明医療大学、筑波大学理療科教員。
著書に 『ひざ痛は「お灸」で消える!』 『最強のボディメンテナンス 体をゆるめてOFFモードにするセルフ灸&指圧』 など。
現代人は、多くのストレスやたくさんの症状をかかえています。
そんなストレスや症状解消の仕方に、ご自身で行うセルフケアがあります。
症状がひどい時に医療機関にかかるのはいうまでもないことですが、その前に自分自身で体調をチェックして自分のカラダの不調をとらえてメンテナンスをして元気で健やかにというのが、私が新しく出した「最強のボディイメンテナンス」という本です。
特にお灸を使って心身のメンテナンスを行うことの大切さが今回のテーマです。
今、日本人はどんな症状を持っているのかを、厚生労働省発表の国民生活基準調査で見てみますと男性は腰痛、肩コリが上位に挙げられますが、女性では肩コリ、腰痛、手足の関節の痛みというように腰痛、肩コリが男女いずれもトップに挙げられています。
で実際に医療機関に通院している人で見ると男性は高血圧、糖尿病などについて腰痛は第4位に。
女性では高血圧についで腰痛があがっているように、今腰痛、肩コリ、肩の関節が痛いというように筋肉や関節のコリ、痛みが多いといえるのです。
腰痛とか肩コリというのは、命までなくなるような症状ではないのですが、本人としては辛く、その辛さのために仕事や日常生活にも支障が出てきたりするのです。
腰の痛み、肩の痛み、ひざの痛みなどを悪化させる原因として、考えられているものに、「恐怖回避思考・行動モデル」というものがあります。これは痛みのメカニズムをとても分かりやすく説明しています。
例えば腰の痛み、肩の痛み、ひざの痛みを自覚している方はその痛みの体験というのが記憶としてずっと残ります。ギックリ腰になった、そのギックリ腰の痛みが強ければ強いほど記憶に残ります。
その状況で、お医者さんから「あなたの骨は変形が強いですね」などとネガティブなことをいわれると「あっ、そうなんだ、骨の変形が強いから痛むんだ」と非観的な解釈にどうしてもなってしまいます。
これは整形外科領域では常識の事実ですが、腰痛イコール骨の変形ではありません。
骨が変形していても腰痛にならない人はたくさんいます。ということは骨の変形だけではなく原因は他にも色々あるということなのです。
だから「骨が変形している」とか「骨の間隔がせまい」などネガティブな情報を痛みの経験の強い人に入力してしまうとどうしても悲観的な解釈、骨が原因でこういう痛みがでてしまうのだということで、次は痛みへの不安や恐れを持ってしまいます。その結果、もう重いものは持たないようにしょう、安静にしていたほうがいい、歩かないほうがいいと自分で日常生活に制限をしてしまう、強い痛みの経験がある人ほどそういうことになるのです。つまり、過剰に腰や肩やひざを大事にしなければならないとの警戒心から回避行動をとるようになり、筋肉の衰えや血行障害などが起こり、痛みの悪循環につながるのです。
腰痛の患者さんは、痛みを自覚していても動ける範囲で動いたほうが絶対回復は早いのです。
しかし、先ほどお話ししたように、腰を大切にしよう、動かないようにしようなどの回避行動はかえって痛みの悪循環を形成してしまいます。
痛みを訴える人のなかで高齢者に非常にこの考えかたに陥る人が多いのですが、こういう方には、骨の変形だけが腰痛の原因ではない、動ける範囲で動かした方が痛みは早く軽くなるという正しい情報を丁寧に伝え、不安や恐れの少ない状態にして、痛みはあるけど上手く付き合っていこうという考え方になると痛みはコントロールできるようになるのです。
これが恐怖回避思考・行動モデルです。
痛みの経験がある人は多いと思うのですが、そういう時には先程のプラス思考に加えてセルフケアの実践などはとても効果的なのです。
心理的なストレス疾患で長期欠勤していた患者さんで歩くことさえままならなかった患者さんの場合ですが、それが歩けるようになったのは何が変わったかというとそれは脳の機能異常が正常に回復したからです。
慢性腰痛で仕事を欠勤している患者の脳は、健康な人の脳と比較すると前頭葉の部分の機能が低下しています。また、海馬や扁桃体という感情などコントロールしている部分の機能が亢進していました。
このように脳の機能異常があると、うつっぽい症状になったり、日常生活に支障がでたりします。そういう方が、セルフケアとか認知行動療法をすることで脳機能の異常を改善することが可能となります。
この前頭葉や海馬や偏桃体の機能異常は、中脳辺縁系で痛みを麻痺させたり、快楽に関与するドーパミンやセロトニンやオピオイドなどの物質を分泌させにくくなります。つまり人間に備わっている痛みをコントロールする機能が破綻してきます。
少し分かりやすく説明します。慢性的に痛みがあったりストレスが続くと、脳の中で痛みを緩和したり、ストレスを和らげたりする機能が上手く働かなくなってきます。機能が上手く働くにはドーパミンやセロトニンなどの物質が関わっているのですが、それが出にくくなってきます。慢性的な痛みやストレスの持続は、痛みやストレスを和らげる物質が出にくくなり機能が働かなくなります。
そんな状況が続くと、睡眠障害、めまい、息ぐるしさ、動悸、胃腸の不調、肩コリ、頭痛、腰痛、関節の痛みなどが出てきます。
これは昔から自律神経症状といわれていて自律神経のバランスが悪くなってくるとこういう症状がでやすいのです。それは脳で何かしらの機能障害が関与していることも分かってきています。
腰痛の病態ですが、以前はレントゲンを撮って、骨の変形の有無を確認し、骨の問題や不良姿勢によって腰痛が起こっていると説明して痛み止め等を処方していました。しかし、それだけでは治らない腰痛の患者さんがたくさんいることも事実であり、事実、慢性的に経過してしまうこともあります。
そんな状況の中で、心的ストレスによって脳の機能異常が起こり、結果、腰痛を増悪することが分かってきました。慢性的な痛みのある人は中脳辺縁系のドーパミンとかオピオイドなど快楽に繋がるようなシステムが異常を起こしやすくなります。その結果、自律神経系のバランスが悪くなり全身の血管や筋肉が異常になってくる。さらにドーパミンやオピオイドシステムが破綻してくると脳で痛みを軽減させる機能が上手く出来なくなってきます。その結果、全身に痛覚過敏いうと触っただけで痛みを強く感じるという症状が出てきやすくなるのです。
ストレスが慢性的な痛みに影響があるのは理解しやすいですが、実はストレスがギックリ腰(急性腰痛)も起こしやすいこともあります。なぜかというとストレスが加わると姿勢が悪くなることが研究で証明されています。
例えば重いものを持ち上げる時、単純に普通に持ち上げるのと、簡単なかけ算(計算)をしながら持ち上げるのとでは明らかにかけ算をしながら持ち上げる場合の方が、姿勢が深くなりヒジも必要以上に曲がって姿勢が悪くなります。つまりストレスがかかると実際より姿勢が悪くなり、筋肉や椎間板に掛かる負担が強くなるのです。
このように心的ストレスは腰への負担と密接に繋がっているのです。
肩コリに関しては、まだはっきりした原因が分かっていません。なぜ肩コリが起こるのかこれは、第一に不良姿勢、今ではパソコンやスマホによる不良姿勢が挙げられます。不良姿勢で首から肩にかけての筋肉の緊張が強くなっているのです。
腰痛は男女同じ程度で自覚しますが、肩コリは7:3あるいは6:4で女性の方が多いことが分かっています。
その原因として、女性ホルモンの影響や筋肉の質の問題等が関係していて、腰痛と同様にストレスなどによる脳の機能異常も関与しています。
肩コリは医療機関で治すにしてもセルフケアで治す場合でも不良姿勢には気をつけることが大切です。
セルフケアは今、世界的に意識が高まってきています。
セルフケアとは自分自身のチカラで痛みを和らげたりコントロールすることで、セルフマネージメントとも呼ばれ、痛みの治療に世界的に広く応用されています。
セルフケアの特徴はいつでもどこでも簡単で自分で出来るため、お金もあまり必要としないので長期にわたる慢性的な痛みの治療などにも無理なく続けることのできるのでセルフケアが最適です。
現在、日本で行われているセルフケアで医学的にもお勧めのセルフケアといえば、まず運動そして恐怖回避思考・行動モデルのような痛みに対する考え方の理解、ヨガ、温泉、お灸などが上位に挙げられています。
しかし、実際の痛みのある患者さんが行っているセルフケアといえば、お風呂に入るなどの温浴、ストレッチ、サプリメントの服用など色々ですが、実は温熱療法としてお灸も重要なセルフケアです。
一番大切なのは、自分に合い、持続できるセルフケアを見つけることが最も大切です。セルフケアの持続は心身の健康に良いのです。
現在、脳の機能異常をどう対応すれば良くすることが出来るか?色々な研究が行われていますが、まず挙げられるのは自分自身が行うセルフケアが重要です。
溜まったストレスを逃すことでドーパミン、オピオイド、セロトニンといった脳の快楽、気持ち良さに関与する物質を分泌させることにつとめる。
そのためには、まずイラッときたらなるべく右から左へ受けながすことが大切で、解消法方としてノートに不満を書くこと。それによりストレスが減少するという研究論文があります。二番目はこれら快楽に繋がる物質を意識的に分泌させること。例えば落ちこんでいる時は、リラックスする、またはテンションが上がる音楽を聴くとかが大切です。
ご自身で行うセルフケアとして、ウォーキングとか呼吸法でセロトニンの分泌を促すことも大切です。
セルフケアの中で有酸素運動とかカラダを動かすことは脳の機能異常の改善にとても良いことが分かっています。
有酸素運動の効用ですが、脳の中の痛みをマヒさせるようなオピオイドの分泌を促すことで痛みをコントロールする部分を賦活させることが可能です。
継続する有酸素運動は、痛みに関係する慢性的な炎症を抑制でき 又、インスリンの分泌もコントロールできるので糖尿病や生活習慣病の予防にもなります。
また、動脈硬化の予防や認知症にもいいといわれており、又ガン細胞の抑制にも繋がると、良いことだらけです。まずは自分にあった継続出来る運動を見つけことが大切です。
セルフケアとしてのお灸(温熱療法)ですが、2011年東日本大震災の後、精神的なストレスが大きかったのでしょうか、若い人も年配の人も多くの不定愁訴を訴える人が増えました。これら不定愁訴は医療機関で精査しても原因は分かりません。でも、カラダが疲れる、冷える、だるいなどの症状を自覚する方が非常に多くなりました。
そんな中で若い女性の間で、お灸を自分で買って自宅で行うという人が増えてきたということが新聞で大きく取りあげられたのです。
新聞には、せんねん灸銀座のお店が大きく紹介されました、ここにはいろんなお灸があります。煙がいやという人には煙のでないお灸や温熱もゆるやかなものから強いものまであります。又、火を使わないお灸などもあるので是非お試めしになってみてください。
お灸というと普通はもぐさをひねって火をつけるものですが、せんねん灸は台座灸といって台座のついたお灸があります。
台座というひとつのクッションがあるためもぐさに火をつけても温熱刺激が和柔らかく、温感が皮膚に伝わるので使いやすく又ほとんどというよりまず火傷はしませんからセルフケアにはとても適しているのです。
お灸は気持ちのいい温熱が皮膚に伝わり、局所の血のめぐりを良くし筋肉の緊張も和らぎ、リラックス効果もあるため、脳の機能異常にも効果があるとされているのです。
この図は、東大病院でガン患者さんやあるいはその家族の方に自分で痛みのコントロールをして頂くために「ツボケア」といったセミナーを定期的に行っています。図はその時にお配りしているツボ図です。
今日のテーマにそったツボといえばまず「合谷」。これは不安やうつに効果のあるツボです。
人さし指と親指のあわさった真ん中で押すと気持ちのいいところが合谷です。
次に「内関」手の内側にあるツボで手首から指幅3本上の真ん中にあります。
乗り物酔いとか妊婦さんのつわりに効果があるツボで、気持ちを落ちつかせる効果もあります。
「足三里」これはひざのお皿の下からすねに向かって指幅4本下がったところにあるツボです。消化機能の亢進や便秘や下痢、痛みに効果のあるツボです。
ボディメンテテナンスとは、ご自身で心身のチェックをして、カラダの不調と向き合い、病院にすぐ行く前にセルフケアをすることが大切です。
自分のカラダは自分自身が一番よく知っているわけで、ご自身でメンテナンスをすることが一番大切なのです。
カラダを動かし、時々お灸でリフレッシュすることは生活の質(Quality of Life)を高めるために大切なことです。
ご自身で心とカラダをセルフチェックして頂き、ぜひ持続できるセルフケアをぜひ見つけて実践してください。それは心身の健康にも繋がり、これからの人生を楽しむことができます。
発行:徳間書店。価格:本体1,500円+税。
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